概要
潤滑油は、車両の構成部品と同様、重要な役割を果たします。潤滑の機能を十全に果たすため、潤滑油は構成部品や車両のあらゆる要求に答える必要があります。潤滑油のベースオイル、組成、また添加剤の種類と割合の決定には高い水準が求められます。潤滑油の品質に応じて、潤滑が必要な部品の性能、耐久性、走行安定性が異なってくるからです。
粘度
粘度 (流動抵抗) とは、変形 (二種類の液体層間の相対運動) に対する内部抵抗 (摩擦) を規定するための潤滑油の能力のことです。粘度指数は、潤滑油の流動性 (低温時および高温時の流動性など) を表わします。
粘度
絶対粘度を表わす SI 単位 (国際単位) は、パスカル・セコンド (Pa s) です。
度量単位 : 1 Pa s = 1 Ns/m2、
粘性換算 : 1 mPa s = 1 cP (センチポアズ)
動粘度
絶対粘度を潤滑剤の密度で割ったのが、動粘度です。
SI 単位 : m2/s.
粘性換算 : 1 mm2/s = 1 cSt (センチストーク)
粘度の温度反応 (VT 反応)
潤滑油の VT 反応は、温度の影響によって変化する粘度を表わします。潤滑油の粘度は、温度と圧力によって変化します。構造的に粘度のあるオイルの粘度は、せん断速度の影響によっても変化します。一般的には、温度上昇により粘度は下がります。
粘度指数 (VI)
粘度指数とは、温度に対する潤滑油の VT 反応を表わします。粘度指数は、鉱物オイルの粘度変化を温度と共に表わす従来型のゲージ盤によって算出した数値です。粘度指数が高ければ、温度変化に対する粘度の変化が比較的小さく、指数が低ければ、逆に粘度の変化が大きくなります。粘度指数は、40 °Cと 100 °Cで測定された粘度値から算出されます。
SAE 粘度等級
アメリカ自動車技術者協会 (SAE) は、自動車にとって最も重要な潤滑油であるエンジン・オイルとトランスミッション・オイルを粘度によって分類し、その分類法がそのまま米国規格に採用されました。SAE 等級とは、低温時と高温時の粘度を表わしたものです。粘度は、低温時の冷間始動に、また高温時のフル・ロード走行または高速走行での充分な潤滑特性に重要な意味を持っています。MB 車に規定されている SAE 等級はシート 224.1/.2 および 231.1/.2/.3 を参照してください。
エンジン・オイル用 SAE 等級
エンジン・オイル用 SAE 粘度等級は、SAE J 300 に記載されています (シート 211.0 を参照)。現在使用されているマルチ・グレード・オイル は 2 つの数字で示されています (例 SAE 10W-40)。「W」の前の数字はエンジン・オイルの冷間時の流動特性を示し、「W」の後の数字は高温範囲の粘度を示します。「W」付きのオイルでは、遵守しなければならない 2 つの限界値の冷間時の流動特性、「コールド・クランキング粘度」と「低温ポンピング粘度」 (両方の絶対粘度の単位は mPa s) が定められています。高温範囲の場合、SAE 等級へのエンジン・オイルの等級付けは、温度 100 °Cのときの動粘度 (mm2/s) にも、150 °Cのときの絶対粘度 (mPa s) およびせん断速度 106 1/s (=HTHS 高温ハイシェア粘度) にも関連します。
トランスミッション・オイル用 SAE 粘度等級
トランスミッション・オイル用 SAE 粘度等級の規格は SAE J 306 で規定されています。エンジン・オイルと同様、「W」の文字が付いた SAE 粘度等級 (75W など) はトランスミッション・オイルの低温流動特性の限界値が適用されます。限界値は温度を限定し、トランスミッション・オイルの絶対粘度が 150 000 mPa s 以下の場合の温度です。どの SAE 粘度等級でも、100 °Cでの流動性は最小度粘度の限度値によって規定されています。また、SAE 粘度等級 80、85、90 および 140 は、最大動粘度によって規定されています。