冷却システム全般
GLC F-CELLモデル253の熱マネジメントには、フューエルセルの冷却、車内のクライメートコントロールおよび高電圧車両電源回路の構成部品の冷却が含まれます。燃料電池システムおよび高電圧車両電源回路構成部品の冷却は、互いに独立した3つのクーラント回路(閉回路)によって行われます。
• 高温冷却回路
• 低温回路1
• 低温回路2
高温冷却回路は、「コールド燃焼」に関わるすべての燃料電池システム構成部品の冷却と、車内のクライメートコントロールを行います。フューエルセルのフィード側の最適温度は68 °Cです。フィード側温度は50 °C ~ 80 °Cの範囲にあります。
低温回路1は、エレクトリックマシン、DC/DCコンバータ、PDU(パワーディストリビューションユニット (Power Distribution Unit))、燃料電池システムのエグゾーストエアターボチャージャを冷却します。
低温回路2は、高電圧バッテリ、DC/DCコンバータ、高電圧バッテリ用交流充電器を冷却します。
各低温回路には1個の、高温冷却回路には2個の回転数制御が可能なクーラントポンプと、さまざまな制御バルブがあります。
高温冷却回路のクーラと低温回路の2個のクーラおよびコンデンサは、サイドクーラ付き冷却モジュールに内蔵されています。中央に位置するファンモータ (M4/7) が冷却モジュールを換気します。ファンモータおよびすべてのクーラントポンプは、ドライブトレインコントロールユニット (N127) によってLIN経由で制御されます。高温冷却回路は、パティキュレートフィルタがフューエルセルを汚れから保護しています(100 µm超)。イオン変換器はクーラントの低導電性 (5 µS/cm未満) を維持します。
クーラント回路ではさまざまなクーラントが使われています。高温冷却回路には特別なクーラントが指定されています。低温回路には標準クーラントを使用します。
燃料電池車両には、専用のクーラントしか使用してはなりません。市販のクーラントまたは水を補充すると、フューエルセルに修復不可能な損傷をもたらす原因となります。
フューエルセルのクーラントに関する注意事項を守ってください:AH06.50-P-0001-01RFW
インストルメントクラスタ (A1) には、燃料電池システムに関する広範囲な情報と充填レベルを超えた場合の警告が表示されます。
高温冷却回路
フューエルセルは約80° Cの温度範囲で作動するため、専用の高温冷却回路で冷却されます。PreCon(プリエントリクライメートコントロール)機能は、フューエルセルの予熱を可能にします。-25° Cまでの冷間始動が可能です。
高温冷却回路はドライブトレインコントロールユニット (N127) によって制御されます。冷却回路内のクーラント圧力は温度に依存し、フューエルセルクーラントポンプの回転数によっても変わります。
高温冷却回路の温度は以下の温度センサによって検出されます。
• 温度センサ1、高温クーラント回路 (B94/28)
• 陰極アウトプット温度センサ(B94/26)
• 陰極インプット温度センサ(B94/27)
高温冷却回路のエクスパンションタンクの冷却水レベルは、高温冷却回路内クーラント充填レベルセンサ (S41/1) によって検出されます。
P20.00-2684-79
高温冷却回路の回路図 |
1 | 高温冷却回路エクスパンションタンク | 11 | 低温回路1ラジエター | M43/12 | クーラントポンプ(冷却フューエルセル、左) | ||
2 | ラジエター | 12 | 低温回路2ラジエター | M43/13 | クーラントポンプ(冷却フューエルセル、センタ) | ||
3 | イオン変換器 | 13 | コンデンサ | N33/5 | 高電圧PTCヒータ | ||
4 | エグゾーストガスフィルタ | 14 | オリフィス | Y16 | 補助ヒータスイッチオーババルブ | ||
5 | 陰極ウォータセパレータ | A109 | フューエルセルスタック | Y138 | 制御バルブ1(高温回路クーラント回路) | ||
6 | フューエルセルクーラ | B94/26 | 温度センサ(陰極、アウトプット) | A | 高温 | ||
7 | 水素ウォーマ | B94/27 | 温度センサ(陰極、インプット) | B | 高温 ~ 中温 | ||
8 | 熱交換器 | B94/28 | 温度センサ1(高温クーラント回路) | C | 中温 | ||
9 | チェックバルブ | M4/7 | ファンモータ | D | 低温 | ||
10 | 高温冷却回路クーラ | M13/5 | クーラント循環ポンプ |
低温回路1
低温回路1は、エレクトリックマシン、DC/DCコンバータ、PDU(パワーディストリビューションユニット (Power Distribution Unit))、燃料電池システムのエグゾーストエアターボチャージャを冷却します。
低温回路1は、ドライブトレインコントロールユニットによって制御されます。これは低温クーラント回路温度センサ2のデータを評価し、必要に応じてエレクトリックマシンリアクーラントポンプを制御します。
パワーエレクトロニクスには、外気温度がきわめて低い場合でも、常に(冷却水温度に応じた)最低クーラント流量が貫流しています。
低温回路1の図 |
1 | 低温回路1ラジエター |
2 | オリフィス (2 mm) |
3 | 低温回路1エクスパンションタンク |
A77 | エグゾーストエアターボチャージャ |
A79/1 | エレクトリックマシン |
B11/6 | 低温クーラント回路温度センサ 1 |
M75/9 | クーラントポンプ(エレクトリックマシン、リア) |
N116/5 | バッテリマネジメントシステムコントロールユニット |
N129/1 | パワーエレクトロニクスコントロールユニット |
N129/8 | フューエルセルDC/DCコンバータコントロールユニット |
Y85 | 制御バルブ1(低温回路1クーラント回路) |
A | 高温 |
B | 高温 ~ 中温 |
P20.00-2683-75
低温回路2
低温回路2は、高電圧バッテリ、DC/DCコンバータ、高電圧バッテリ用交流充電器を冷却します。
低温回路2は、ドライブトレインコントロールユニットによって制御されます。これは低温クーラント回路温度センサ2のデータを評価し、必要に応じて高電圧バッテリクーラントポンプを制御します。周辺温度に応じて、高電圧バッテリの余熱は、低温回路2のラジエター、または冷媒回路に接続されている熱交換器を介して排出されます。低温回路2の制御は、高電圧バッテリ冷却スイッチオーババルブの制御によって行います。
熱交換器は、クーラントを、熱交換器に噴射されて気化した冷媒によって冷却します。続いて、冷却されたクーラントは低温回路2に流れます。高電圧バッテリの充電時は、温度が中程度の場合は、低温回路スイッチオーババルブ2が高電圧バッテリ用交流充電器およびDC/DCコンバータコントロールユニットの方向へ切り換わります。エレクトロニクスの余熱は低温回路2クーラによって放出されます。
高電圧バッテリの温度が低い場合は、クーラントは高電圧バッテリ冷却エクスパンションバルブによって遮断された熱交換器を介して導かれます。この場合は、高電圧バッテリの熱容量は、高電圧バッテリ用交流充電器のエレクトロニクスとDC/DCコンバータコントロールユニットの冷却に使用されます。
ドライブトレインコントロールユニット内のエネルギマネジメントモジュールは、燃料電池システムのエネルギフローを制御します。このモジュールは電気量に関して、バッテリマネジメントシステムコントロールユニット、パワーエレクトロニクスコントロールユニットおよび電動冷媒コンプレッサへのインタフェースとなります。
エネルギマネジメントが作動OKを発信すると、ドライブトレインコントロールユニットは、CAN接続経由でクライメートコントロールユニット (N22/1) に、電動冷媒コンプレッサの制御を要求します。続いて、クライメートコントロールコントロールユニットが電動冷媒コンプレッサをエアコンLIN 2 (LIN B82) 経由で制御します。高電圧バッテリ冷却エクスパンションバルブは、バッテリマネジメントシステムコントロールユニットによって開弁し、冷媒は熱交換器を流れます。その結果、低温回路2から熱エネルギが放出されます。
冷却能力は主として電動冷媒コンプレッサの制御の程度に応じます。アイドリング時および自動エンジン停止の間、電動冷媒コンプレッサの出力は最大約2 kW以内に制限されます。高電圧バッテリの充電状態が非常に低い場合、電動冷媒コンプレッサの出力は0 kWまで下方調整されます。
低温回路2の図 |
1 | 低温回路2ラジエター |
2 | 熱交換器 |
3 | 低温回路2エクスパンションタンク |
A100 | 高電圧バッテリモジュール |
B11/7 | 低温クーラント回路温度センサ2 |
M75/10 | 高電圧バッテリクーラントポンプ |
N82/2 | バッテリマネジメントシステムコントロールユニット |
N83/1 | DC/DCコンバータコントロールユニット |
N83/11 | 高電圧バッテリ用交流充電器 |
Y73/2 | 低温回路スイッチオーババルブ2 |
Y110 | 高電圧バッテリ冷却システムエクスパンションバルブ |
Y140 | 高電圧バッテリ冷却スイッチオーババルブ |
A | 加熱されたクーラント |
B | 冷却されたクーラント |
C | 冷媒(高圧、液体) |
D | 冷媒(低圧、気体) |
P20.00-2682-75
過圧保護機能
フューエルセルスタック、インタークーラまたは水素プレヒータの漏れが原因で、空気または水素が冷却回路内に入ることがあります。この気体は高温冷却回路のエクスパンションタンクへのブリードラインを通って放出され、最終的にオーバプレッシャバルブから車外に放出されます。バルブは過圧が0.8 barを超えると開きます。流出したガス/空気の混合体はエンジンルームに排出されます。